クラウドファンディングの目標金額を決めるとき、「できれば100万円集めたい」「高すぎると達成できなさそうだから、低めに設定しよう」と、感覚だけで決めていないでしょうか。
目標金額は、単に集めたい金額ではありません。商品やサービスの原価、梱包費、送料、プラットフォーム手数料、ページ制作費、広告費などを計算し、プロジェクトを最後まで実行できる金額を設定する必要があります。
支援総額が100万円に達しても、100万円すべてが手元に残るわけではありません。必要経費を含めずに設定すると、目標を達成したのに製造費や送料が不足したり、支援件数が増えるほど赤字が膨らんだりする可能性があります。
この記事では、固定費と変動費を整理し、手数料やリターン原価を含めて目標金額を計算する方法を解説します。
この記事で分かることは次のとおりです。
- 目標金額に含める費用
- 固定費と変動費の分け方
- 手数料率を考慮した計算方法
- リターンごとの収支計算
- 目標金額と必要支援者数の考え方
- All-or-Nothing方式とAll-In方式で注意する点
重要
本文中の手数料率や金額は、計算方法を説明するための例です。実際の料率、消費税の扱い、入金条件、募集方式の名称や条件は、利用するプラットフォームの最新の公式情報を確認してください。
クラファンの目標金額は希望額だけで決めない
クラウドファンディングの目標金額は、「このくらい集めたい」という希望額ではなく、プロジェクトを実行するために必要な金額から逆算します。
最初に考えるべきなのは達成率の見栄えではなく、成立後に支援者へ約束した商品やサービスを無理なく提供できるかどうかです。
支援総額がそのまま手元に残るわけではない
支援総額からは、主に次の費用が差し引かれます。
- プラットフォーム利用料や決済関連費用
- 商品やサービスの原価
- 梱包資材費と送料
- 写真・動画・ページ制作費
- 広告費や外注費
- 人件費
- 税金
- 予備費
購入型クラウドファンディングでは、支援件数が増えるほど商品原価や送料も増えます。そのため、プロジェクト全体の目標金額だけでなく、リターン1件あたりの収支も確認する必要があります。
目標達成後に赤字になるケースもある
次のような見落としがあると、目標達成後に資金不足へ陥る可能性があります。
- 手数料を含めていない
- 原価を低く見積もっている
- 梱包費や再発送費を計算していない
- 地域やサイズによる送料差を考慮していない
- 早期割引を大きくしすぎている
- 支援数が増えたときの追加人員や保管費を考えていない
- 広告費や外注費を見落としている
たとえば、支援金額5,000円のリターンで、商品原価が3,000円、送料が800円、梱包費が300円なら、手数料を差し引く前に残る金額は900円です。手数料率を仮に17%とすると850円が差し引かれ、残るのは50円です。
このリターンに支援が集中すると、支援総額は増えても、プロジェクトに使える資金はほとんど増えません。
まず最低実行金額を把握する
目標金額を決める前に、「この金額を下回ると実行できない」という最低実行金額を計算します。
最低実行金額には、少なくとも次を含めます。
- 商品・サービスを提供する費用
- リターンを準備する費用
- 梱包・発送費
- 撮影やページ制作費
- プラットフォームへ支払う費用
- 予備費
新商品を製造する場合は、最低発注数量や初期製造費も確認してください。工場への最低発注額が50万円なら、目標金額を30万円に設定して達成しても、製造できません。
目標金額に含める費用
費用は次の5項目に分けると、見落としを減らせます。
- 商品・サービスの原価
- 梱包費と送料
- プラットフォーム手数料と決済関連費用
- ページ制作費・広告費・人件費
- 税金と予備費
商品・サービスの原価
商品の場合は、材料費、仕入れ費、製造費、加工費、パッケージ費、印刷費、検品費、試作品費、金型費などを確認します。
サービスの場合も原価がゼロとは限りません。担当者の稼働時間、会場費、配信ツール、教材制作、交通費、外部講師への報酬、予約対応などが発生します。
発注数量によって単価が変わる場合は、楽観的な大量発注単価だけで計算しないことが重要です。1,000個では1個1,000円でも、100個では1,800円になることがあります。現実的な支援数と最低発注数量を前提に試算しましょう。
梱包費と送料
送料だけでなく、次の費用も含めます。
- 段ボール、封筒、緩衝材
- テープ、ラベル、同梱物
- 梱包作業
- 配送ラベルの作成
- 倉庫・保管費
- 住所不備や長期不在による再発送費
大型商品、重量物、冷蔵・冷凍品、離島配送、海外発送では費用差が大きくなります。リターンごとに、実際の梱包状態に近いサイズと重量で試算してください。
海外発送を行う場合は、送料のほか、関税、配送期間、追跡、紛失・破損対応、配送できない地域も確認します。
プラットフォーム手数料と決済関連費用
料金を比較するときは、表示されている料率だけでなく、次を確認します。
- プラットフォーム利用料
- 決済関連費用
- 料率に対する消費税
- 振込手数料
- システム利用料
- 有料オプション
- 目標未達時の費用
- キャンセル・返金時の扱い
- 支援金の入金時期
「手数料17%」と表示されていても、その17%に消費税が別途かかる場合は、実際の控除率は17%より高くなります。必ず、最終的に支援総額から差し引かれる金額で計算してください。
なお、支援者側に発生するシステム利用料などは、実行者の受取額から直接差し引かれない場合があります。ただし、支援者が支払う総額や支援のしやすさには影響するため、別途確認しておくとよいでしょう。
ページ制作費・広告費・人件費
主な費用は次のとおりです。
- 写真・動画撮影と編集
- デザイン、ライティング、図解
- 翻訳
- Web広告、SNS広告
- プレスリリース配信
- 外部コンサルタント
- 問い合わせ対応
- 梱包・発送作業
自社対応で外注費を抑えても、作業時間は発生します。すべてを人件費として目標金額に含めるかは方針次第ですが、通常業務への影響を含め、必要な工数は把握しておきましょう。
広告を使う場合は、予算上限、配信期間、支援1件を得るために許容できる費用、停止基準を事前に決めます。
税金と予備費
クラウドファンディングの税務上の扱いは、購入型・寄付型・投資型などの類型、法人・個人の違い、取引内容によって変わります。購入型では、リターンとの対価関係がある取引として扱われる場合があります。
個別の税務判断は、記事やAIの説明だけで行わず、必要に応じて税理士や会計担当者へ確認してください。
予備費は、次のような変動へ備えるために設定します。
- 原材料や送料の値上がり
- 為替変動
- 試作品の作り直し
- 不良品や再発送
- 製造先の変更
- 追加外注
- 保管期間の延長
固定費と変動費を分けて考える
目標金額を正しく計算するには、費用を固定費と変動費に分けます。
固定費とは
固定費は、支援者数にかかわらず発生する費用です。
- 試作品や金型
- 写真・動画制作
- ページデザイン
- 初期の広告制作
- 会場予約
- システム開発の初期費用
変動費とは
変動費は、支援件数や提供数量が増えるほど増加する費用です。
- 商品原価
- 梱包費
- 送料
- 支援総額に連動する決済・手数料
- 1件ごとの外注費
- 個別サービスの提供費用
- 不良品や再発送に備える費用
1件あたりの変動費が4,000円なら、100件で40万円、500件で200万円になります。
目標金額を計算する基本式
ここで注意したいのは、変動費が支援件数に応じて増えるため、単に「固定費+想定件数分の変動費」を手数料率で割るだけでは、実際の目標金額と支援件数がずれることがある点です。
計算は、次の順番で行うと整合性を保ちやすくなります。
変動費がほとんどない場合
リターン原価や送料がほぼ発生しない場合は、次の式で考えられます。
必要な目標金額 = 手数料を除く必要額 ÷(1 − 手数料率)
手数料を除いて100万円必要で、実効手数料率を仮に17%とすると、次のとおりです。
1,000,000円 ÷ 0.83 = 約1,204,819円
17%という数値は計算例です。実際には、消費税を含む実効的な控除率を使ってください。
変動費がある場合は「1件あたりに残る金額」から計算する
購入型クラウドファンディングでは、平均支援単価と平均変動費を使う方法が分かりやすいです。
1人あたりに固定費へ充てられる金額 = 平均支援単価 ×(1 − 手数料率)− 1人あたりの平均変動費
必要支援者数 =(固定費 + 予備費)÷ 1人あたりに固定費へ充てられる金額
目標金額 = 必要支援者数 × 平均支援単価
複数のリターンがある場合は、想定する販売構成から平均支援単価と平均変動費を計算します。
リターンごとの収支を計算する
1件あたりに残る金額は、次の式で確認します。
1件あたりに残る金額 = 支援金額 − 手数料 − 商品・サービス原価 − 梱包費 − 送料 − その他の変動費
たとえば、支援金額10,000円、手数料等1,700円、商品原価3,000円、梱包費300円、送料800円、その他200円なら、残る金額は4,000円です。
| 項目 | 1件あたり |
|---|---|
| 支援金額 | 10,000円 |
| 手数料等 | 1,700円 |
| 商品原価 | 3,000円 |
| 梱包費 | 300円 |
| 送料 | 800円 |
| その他の変動費 | 200円 |
| 残る金額 | 4,000円 |
複数のリターンがある場合は、各リターンについて同じ表を作り、想定件数を掛けて全体を試算します。
売れるほど赤字になるリターンを避ける
支援金額5,000円に対し、手数料等850円、商品原価3,000円、梱包費300円、送料1,000円なら、合計費用は5,150円です。1件支援されるごとに150円の赤字になります。
特に次のリターンは慎重に計算してください。
- 送料無料の商品
- 大型・重量商品
- 海外発送
- 複数商品のセット
- 割引率の高い早期支援プラン
- 個別対応が必要なサービス
- 会場費や交通費を伴うリターン
赤字を集客施策として許容する場合も、赤字額と提供上限を決め、数量限定にします。
目標金額の計算例
次のモデルケースを考えます。
前提条件
| 項目 | 金額・条件 |
|---|---|
| 固定費 | 700,000円 |
| 予備費 | 100,000円 |
| 平均支援単価 | 10,000円 |
| 1人あたりの平均変動費 | 3,800円 |
| 手数料率 | 17%(仮定) |
1人あたりに固定費へ充てられる金額
10,000円 × 0.83 − 3,800円 = 4,500円
必要支援者数
(700,000円 + 100,000円)÷ 4,500円 = 約177.8人
端数を切り上げ、必要支援者数は178人です。
目標金額
178人 × 10,000円 = 1,780,000円
この条件では、目標金額の目安は178万円です。
確認すると、178万円から17%を差し引いた金額は147万7,400円です。そこから178人分の変動費67万6,400円を差し引くと、80万1,000円が残ります。固定費70万円と予備費10万円を賄える計算です。
計算上の注意
「100人分の変動費を含めた必要額」を手数料率で割るだけでは、算出された目標金額が100人分を超え、その分の原価や送料を計算に含められない場合があります。変動費があるプロジェクトでは、平均支援単価から必要支援者数を先に求める方法が安全です。
複数リターンがある場合
複数のリターンを用意する場合は、想定件数に基づいて加重平均を求めます。
平均支援単価 = 想定支援総額 ÷ 想定支援者数
平均変動費 = 想定変動費の合計 ÷ 想定支援者数
低価格の応援プラン、主力商品、セット、高額プランについて、支援が少ない場合・想定どおりの場合・想定以上の場合の3パターンを作っておくと安心です。
All-or-NothingとAll-Inで考え方は変わる
募集方式の名称や条件はプラットフォームによって異なりますが、代表的な考え方は次のとおりです。
All-or-Nothing方式
目標金額を達成した場合のみプロジェクトが成立する方式です。最低限必要な資金が集まらなければ実行できないプロジェクトに適しています。
目標金額は、手数料やリターン費用を差し引いた後にも最低実行金額が残るように設定します。不足分を確実に自己資金などで補える場合を除き、必要額より低い目標は避けましょう。
All-In方式
プラットフォームによっては、目標未達でも一定の支援があれば成立し、実行者にリターン履行義務が生じます。
そのため、支援額が少ない場合でも、自己資金を含めてプロジェクトとリターンを実行できることが前提です。最低発注数量を満たせない場合や、支援件数が少ないほど原価が上がる場合は特に注意してください。
3段階の金額を整理する
募集方式を決める前に、次を整理すると説明しやすくなります。
- 最低実行金額:下回るとプロジェクトを実行できない金額
- 希望目標金額:品質向上や十分な集客まで含めた金額
- 上振れ時の使い道:目標を超えた資金を何に使うか
目標金額を低く・高く設定しすぎるリスク
低く設定しすぎるリスク
達成率を高く見せるために必要額より低く設定すると、成立後に製造費や送料が不足する可能性があります。
不足分を自己資金、融資、通常事業の売上などで確実に補えるかを、公開前に確認してください。「目標を大きく超えるはず」という期待だけに頼るのは危険です。
高く設定しすぎるリスク
必要性を説明できない高額目標は、支援者に現実性を感じてもらいにくくなります。
高額にする場合は、資金の使い道、準備状況、実行体制、達成後の予定を具体的に示しましょう。
想定支援額から達成可能性を確認する
必要経費から目標金額を計算したら、現実的に集められるかを確認します。
想定支援総額 = 想定支援者数 × 平均支援単価
支援候補者には、既存顧客、過去の購入者、取引先、知人、メール読者、LINE登録者、SNSフォロワー、協力者などが含まれます。ただし、案内できる人数がそのまま支援者数になるわけではありません。
必要額と想定支援額に大きな差がある場合は、目標金額を根拠なく下げるのではなく、次を検討します。
- 公開前の集客期間を延ばす
- 支援候補者を増やす
- リターン価格や構成を見直す
- 法人向け・高額リターンを追加する
- 原価や固定費を見直す
- 自己資金や他の資金調達手段を組み合わせる
- プロジェクトを段階的に実施する
目標金額を決める前のチェックリスト
必要経費
- □ 最低実行金額を計算した
- □ 固定費と変動費を分けた
- □ 原価と最低発注数量を確認した
- □ 梱包費と送料を試算した
- □ 制作費、広告費、外注費を含めた
- □ 作業時間と人員を把握した
- □ 予備費を設定した
手数料
- □ 利用料と決済関連費用を確認した
- □ 消費税を含む実効的な控除率を確認した
- □ 振込手数料と有料オプションを確認した
- □ 入金時期を確認した
リターン
- □ すべてのリターンで1件あたりの収支を計算した
- □ 売れるほど赤字になるリターンがない
- □ 数量制限と発送時期が現実的である
- □ 想定以上の支援にも対応できる
達成可能性
- □ 平均支援単価を試算した
- □ 必要支援者数を計算した
- □ 公開前に案内できる相手を整理した
- □ 目標未達時の不足資金の補い方を決めた
- □ 上振れ時の資金使途を決めた
- □ 必要に応じて税務・会計の専門家へ確認した
クラウドファンディングの目標金額に関するよくある質問
手数料は目標金額に含めるべきですか
含めて計算する必要があります。料率が支援総額に対して発生する場合は、消費税などを含めた実効控除率を確認し、差引後に必要額が残るように逆算してください。
送料は支援者負担にできますか
利用するプラットフォームやリターンの設定方法によって異なります。送料込みで表示する場合は、実行者の経費として必ず収支に含めます。
目標金額は公開後に変更できますか
公開後の変更可否は、プラットフォームの規約や機能によって異なります。目標金額は支援判断に関わる重要条件なので、変更できる前提で計画せず、公開前に確定してください。
目標金額を超えた支援金はどう使えばよいですか
プロジェクトページで示した目的との整合性を保ち、追加生産、品質向上、発送体制の強化、次の開発などに使います。追加資金の使い道と進捗は、活動報告などで支援者へ説明すると透明性を保ちやすくなります。
目標金額は低いほうが達成しやすいですか
数字上は達成しやすくなりますが、必要額を下回ると成立後に資金不足となります。不足分を確実に補える場合を除き、達成率の見栄えだけで低く設定しないでください。
まとめ|目標金額は必要経費と支援単価から逆算する
クラウドファンディングの目標金額は、希望額だけで決めるものではありません。
まず固定費と予備費を整理し、リターンごとの変動費、平均支援単価、手数料率から、必要支援者数と目標金額を計算します。
重要なポイントは次の3つです。
- 必要額を正しく計算する
- リターン1件ごとの収支を確認する
- 必要支援者数と集客力から達成可能性を判断する
支援されるほど赤字が増えるリターンを避け、成立後に必ず実行できる計画を作りましょう。
クラウドファンディング全体の進め方は、クラウドファンディングの始め方|初心者向けに準備から公開まで徹底解説で詳しく解説しています。
また、リターンの種類や価格設定、早割・数量限定の設計方法については、「クラウドファンディングのリターンの作り方」で詳しく解説しています。



